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コラム

花岡 貴子
花岡 貴子

Legend Stable 池江泰郎厩舎の軌跡

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2010年05月28日

リルダヴァルとトゥザグローリー ダービーまでの道 <4>

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入厩時のトゥザグローリー

入厩時のトゥザグローリー
9月17日、大安吉日。池江泰郎厩舎にトゥザグローリーと名付けられた2歳の牡馬がやってきた。母はドバイワールドC2着のトゥザヴィクトリー。母もこの厩舎で育った馴染みの血統だ。
一歩一歩、実にゆったりと歩き余計な動作ひとつしない。"命の危険を感じさせるほどの荒くれ者"だったリルダヴァルとは正反対で、穏やかすぎるほどのんびりとした雰囲気を醸し出していた。
馬体は同世代と比べてひとまわりもふたまわりも大きい。馬体重はなんと550キロもあったが、池江師はその馬っぷりのよさを逆に評価した。
「体重ほど体を重く見せないのがいいね。まだお腹がぷっくりしているけど、これから毎日特訓すれば520キロくらいでレースに出れるだろう。」

翌、9月18日。トゥザグローリーはさっそく栗東トレーニングセンターでの調教をはじめた。トレセンで調教を始める若駒はトレセンという場所での環境の変化に戸惑い、ジタバタすることが多いものだ。馬のジタバタ――、若駒とはいえ1馬力のパワーで抵抗するのを人間が全力で押さえ込むのは騎乗者の誰もが細心の注意を払う。しかも、母のトゥザヴィクトリーはカーッとなりやすい気性の勝った性格だった。その遺伝子を考えたら、用心などどれだけ用意しても足りない。池江敏行調教助手はそんな気持ちでトゥザグローリーの高く大きな背中に注意深くまたがった。だが、予想に反してトゥザグローリーは微動だにしない。
「ずいぶんボーッとした馬だな。」
敏行助手はやや首をかしげながら坂路コースへ向かった。
トレセンというのはレース間近の緊張感漲る馬たちが行き交う場所だ。レースを間近に控えるハイテンションな馬とすれ違うこともしばしばある。が、しかし。トゥザグローリーはそんなこと、まったく意にも介さない。
坂路の入り口。敏行助手はトゥザグローリーがあまりにボーッとしているように感じた。それに業を煮やし、"ちょっとだけ"馬を動かすつもりで軽くハミをかけて、トゥザグローリーに"オン"の指示を与えた。すると…。

ビューーーーーン!!!

トゥザグローリーは、ギアをローからいきなりトップに入れたような凄い勢いで坂を駆け出した。
「な、なんだ!?」
いまの時期にいきなり速いタイムを出したら馬が壊れてしまう。すぐさま敏行助手は全身の力をトゥザグローリーのハミにかけ、トゥザグローリーのスイッチを"オフ"へ切り替えた。すると、トゥザグローリーはハミをシッカリと噛みながらもスーッとスピードを落として敏行助手の指示に従った。
「……すごい。」
敏行助手は1979年、池江泰郎厩舎開業と同時にこの厩舎で馬の調教をつけ続けているが、これほど極端なギアチェンジをみせる馬を見たことがなかった。しかも、その走りは大きい体のわりに軽さを感じさせた。
「こいつは大物だ。この馬もディープインパクトやメジロマックイーンのような結果を出すレベルに育てなければいけない。」

そして池江師はその走りを見守り、最後のダービーへの意識を強めた。
「さぁ、役者が揃ってきったぞ!」


各レースの成績、払戻金などのデータは、必ず主催者発表のものでご確認ください。

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