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コラム

花岡 貴子
花岡 貴子

Legend Stable 池江泰郎厩舎の軌跡

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2010年05月24日

リルダヴァルとトゥザグローリー ダービーまでの道 <2>

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2歳時のリルダヴァル

2歳時のリルダヴァル
リルダヴァルは確かに、競馬センスも走りも素晴らしい。村本助手に「この馬はちょっと違う。ゴム鞠のように柔らかい」と言わしめたほどだ。しかし、
「はたして競走馬になるのだろうか?」
と思わせるほど気性にクセを抱えていてるのも事実。
「決して怯まないが、時々挙動不審になる。立ち上がるタイミングも読めない。」
馬の耳に念仏とはまさにこのことで、リルダヴァルにトレセンでの規律や競走馬としてすべきことを口で説明したところで理解などできない。断っておくが、リルダヴァルは育成段階でもじゅうぶんに馴致はなされていた。その証拠にハミ受けはよく、ゲートも問題としなかった。練習がてら、受けたゲート試験で難なく合格してしまったほどだ。馬っ気の強さや荒い気性は単にリルダヴァルの持って生まれた性格によるものだ。

最初に参ったのはリルダヴァルだった。入厩してしばらく後、下痢をおこした。新しい環境に戸惑ったのだろう。しばらくして、次に参ったのは片山助手だ。あるとき、リルダヴァルが鞍上の片山助手に歯向かって首を急に振り上げてきた。まさに体当たり。片山助手はリルダヴァルを避けようとして瞬間的に避けた。が、しかし。リルダヴァルはさらにその柔らかい体を上方へよじらせ、片山助手の顔面に思い切りぶつけてきた。
「……折れた」
瞬間でそう思える激痛が走った。
「それは、痛いとか辛いとか、そういう次元を超えた痛みでした。喋ることさえ、できなかった」
病院の診断は、顎骨の亀裂骨折。
「休みますか?」
と当たり前のように医者は言った。だが、ここで仕事を休んでリルダヴァルとの"対話"を途切れさせるわけにはいかない――。そのまま、片山助手は翌朝も再びリルダヴァルにまたがり、ただひたすら言葉を喋らぬ荒くれ者と向かい合った。
「とにかく、この環境に慣れさせるしかない。とにかく、競走馬になってくれ」
その一心でリルダヴァルと体を張った対話を続けた。すると、今度はリルダヴァルが筋肉疲労を起こし、予定されていた8月2日のデビュー戦が白紙になった。
「この先も、わかるまでひたすら対話を続けるしかない」と思われたある日。リルダヴァルが徐々に従順な面を見せるようになった。
「決して大人しくはなっていないけれど…落ち着いたというか。リルダヴァルのちょっとした仕草から次の動作が読めるようになりました。たとえば、立とうとする直前に一瞬背中がピクッと動くのを感じるとか。そうやって正面からリルダヴァルと向き合っていくうちに『これはしてくれるな』という悪さをしなくなりました。」
リルダヴァルの大きな胸前に片山助手が抱きつくのを許すようになったのも、この頃のことだった。


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